スタートレック5・新たなる未知へ

『スタートレック5・新たなる未知へ』
ST5


【総論】

シリーズ唯一、ラズベリー賞候補になった作品。監督はカーク船長役のウイリアム・シャトナーで、この作品のせいですっかり「監督としてはダメな人」の烙印を押されてしまった。話はどこか尻切れトンボだし、特撮もしょぼい。(ILMを使わなかったせいか?)
"神様"を持ち出して失敗しちゃうのも「スタートレック」の伝統ではあるが、映画でそれをやっちゃうのは辛いところだ。
物語の中心になるのが(今頃になって登場した!)スポックの異母兄! でも、そんな設定にしなくても、単に異端のヴァルカン人というだけの方が良かったように思う。スポックの血縁的葛藤よりも、カークと(スポックとは違う、もう一人の)ヴァルカン人の戦いと対話・交流を描いた方が「スタートレック」本来の宇宙探検というテーマとも合致するんじゃないだろうか。

とはいえ、もちろん良いところもある。
前作までのように話を次回に引きずらせることなく、今作は独立して「宇宙探検」をストレートに堂々と描いている。何しろ、初めての人がいきなり見て話を追えるのは、1(THE MOTION PICTURE)と5(今作)だけだ。
冒頭のキャンプシーンで語られる、カーク・スポック・マッコイの会話がとても暖かい。みんな歳を取った。この3人の友情がTOSを引っ張り続けてきたわけで、昔からずっと見ているこちらも『そうか、もう随分長い付き合いなんだなぁ..』と感慨深くなってくる。
そのあとに、月をバックに浮かぶU.S.S.エンタープライズを後方からのあおり(あの一番かっこいい角度!)で愛でるように見せてくれるものだから、思わずジーン..と来る。こっちまで、カーク船長の気持ちとシンクロしてしまうのだ。
「スタートレック」の魅力は数あれど、やはり何と言っても「夢の宇宙船で、未知に向かってどこまでも宇宙探検!」だものなぁ...こういう部分はTNG以降の作品にはほとんどない(断定)ので、これはとても大切な作品と思う。


【この作品のポイント】

☆設定によれば、前作でカーク船長に渡された新エンタープライズ(NCC-1701-A)は改装中のU.S.S.ヨークタウンを改名した新型艦だそうだ。船を取られたヨークタウンのクルーがその後どういう扱いになったのか、ぜひ知りたい。

☆それにしても、どんな仕事をしているんだか、あまりにも完成度が低い船だ。ドアは開かない、転送機も動かない、航星日誌も..って、おいおい、なんでそれもダメなんだ? だって、明らかにポータブルデバイスじゃないか!?(「航星日誌」が映像に出てきたのはこれが初めてだけど、インターフェイスが24世紀のPADの元祖っぽい。)

☆「この船は猿が造ったのか? エンジンは上等だが、ドアがガタガタだ。直すのが大変だぞ。」..このフレーズ、使い勝手がいいので、あちこちで利用させてもらっている。その意味では「故障を装え。装う必要もないがな。」もいいですな。

☆ついでに、スポックも壊れてる。前作のテイストを使いたかったのかもしれないけど、ほとんど道化役のようだ。...

☆ウフーラの"白髪"はやり過ぎだ。いや、裸踊りの方がもっとやり過ぎか。...

☆23世紀でも、ジーンズは健在なんだ! (もしかしてマッコイ、前作で20世紀に行った時に、カークから貰ったお金で買ったか?)

☆マッコイがつくる「マッコイ家の豆料理」。隠し味はテネシー・ウイスキー。ああ、食べてみたい...。(この映画を見て以来、アメリカ南部の豆料理と聞くと、食べずにいられなくなってしまった。)

☆エンタープライズ搭載のシャトルにはそれぞれガリレオとかコペルニクスとか、実在・架空の宇宙関係の偉人の名前が付けられている。(TNGにはオニヅカも出てくる。) ふと思ったのだけれど、これって宇宙艦隊全体で統一されているんだろうか? なんかエンタープライズが有名どころばかり持って行ってしまっている気がするけど。...

☆クリンゴン・バード・オブ・プレイの急襲からシャトルを収容しつつ脱出するシーン、カッコいい! シャトルを収容するためにはシールドを下ろさなければならないし、下ろせばバード・オブ・プレイに撃たれるし、さて?! ところであちこちの映画で耳にする緊急作戦「プランB」って、誰が最初に使ったんだろう?

☆カーク船長のセリフ「苦痛は魔法の杖では取り除けない。背負って生きるのが人生だ。それが自分だ。」これが一番言いたかったんだろうな。.. お互い、そう言い切れる人生にしないとね。

☆"神様"に「神が知らないのか?」「神に船が必要なのか?」と次々に平気で質問するカーク船長。いいぞ、そうでなくっちゃ! さすが、だてにアポロやリンカーンと対談してないな。

☆あまりファンの評判が良くないと思われるテーマ曲(後にTNGのテーマにもなった第1作目の曲に、バード・オブ・プレイを意味するのか、鳥の声のようなものが入る)だけど、個人的にはけっこう好き。そもそもこの頃は、あの(ハズした第一作の)テーマ曲を使用するのは"縁起が悪い"と言われたものだった。TNGから入ったファンには信じられない話だろうけど。...「スターログ」誌などで第一作を擁護し続けたウイリアム・シャトナーの意地かもしれない。


【印象的なセリフ】
カーク 「君達がいたから、死なないとわかっていた。」
スポック「...解らんね。」
カーク 「死ぬのは独りの時だ。」
マッコイ「...天国に部屋を予約しておいてやる。」


【今回の「頑張れ!チェコフ」】
せっかく"船長役"を楽しめたのに、サイボックに洗脳された後はいい事なし。


【今回のU.S.S.エンタープライズ】
ドアは開かない。転送機は動かない。通信も不調。(奇数作のジンクスは健在。)


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